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漆黒の暗闇の中で
火をともす技術を得た人々がいた
火は光であり、ぬくもりであり、
灼熱であった
ひとびとは崇高な祈りをささげた
ある若者たちが、
ふるさとゆかりの樅の木を、
光の渦で飾ろうとしている
光が樅の木を媒体にして、
わたしたちに何を語りかけてくるのか
その夜の感動の言葉を聞きたい
1989年12月22日から24日までの3日間、船岡城址公園の樅の木がライトアップされ広告塔がイルミネーションで飾られた。酒席で「若者たちで何か大きな手作りイベントをやろう」と語られてから300日目であった。題して「樅の木は光った」。12名で実行委員会を設立し、最終的には68名の若者たちが集まった。1800人、総額240万円の募金が集まった。寒い冬の3日間にもかかわらず5000人を超える人たちが公園に足を運んでくれた。
今もクリスマスが近付くと「樅の木は光った」を思い出し”胸がキュン”となる。実行委員はもちろん多くの人たちに支えられたイベントであった。充実した1年であり、私の20世紀の10大ニュースの一つである。もう一度あの感動を味わってみたいと思うのだが、まだエネルギーが不足している(このまま満タンまで充電できないのかもしれない)。淋しい。
瞬間
私を貫いた光。
若者の、心の光が、うたい舞う。
ふるさとの樅の木は、巨大な感動となって、
わたしの前に屹立していた。
若者たちが、あの時を再現するという。
わたしは、慄然として、その刹那をまっている。
あの夜、わたしは、公園のはずれ、
誰もいない木を背に立ちつくしていた。何が起こるのか。
瞬間。総身が硬直した。
若者たちが人為と手立てをつくした期待をこえ、
樅の木と数多くの光は、命をこめて、わたしを打据えた。
わたしの心を、感動が水滴となって、流れおちた。
冒頭の詩はイベントのポスターに使用したもので、最後の詩はイベント実行委員会の修了誌に書いてもらったもの。毎号短歌のページを書いてもらっていただいている渡辺氏の作である。写真は北船岡側から撮影。 |