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教 育 制 度

 暑中お見舞い申し上げます。
 日本が夏休みの季節になると、嬉しいことに私は日本からのお客様を迎えることが多くなります。毎年8月にシンガポールを訪れる日本人の数は10万人を越え、国別観光客数の中で第一位になるそうです。数日過ごした私の個人的お客様は、皆さん声をそろえて「日本より涼しい!」だそうです。シンガポール旅行は日本が真夏の頃をお勧めした方がいいかもしれません。
 シンガポールでの教育制度の話しを続けたいと思います。小学校4年生で選別された子供達はその後、卒業時に全員小学校統一卒業試験に臨み、その点数によって入学する中学が決まります。どのぐらいの点数が取れそうか、その点数だとどの中学に入れそうかなどを、トップ中学100校の資料と照らし合わせながら希望校を選びます。まるで日本の偏差値テストさながらです。まだ小学校生ですから何とも気の毒でたまりません。一人一人の試験の点数と志望校名が一斉にコンピュータにインプットされ、コンピュータが情報を処理し成績結果と一人一人の入学する中学を指定してきます。評判の良い中学は希望者も増えますから、入学基準の点数も年々高くなって益々子供達は勉強に追い立てられる悪循環が出来上っています。毎年成績を気にして自殺をする子供達のニュースを聞くたびに私はその本人と親御さんの心中を思って暗澹とした気分になります。
 
国立シンガポール大学の一部。広大なキャンパス内はバスで移動。
シンガポールの中学校は4年間ですが、少しペースを落として勉強させる5年間のコースもあります。優秀な生徒が集まっていると言われている中学校では4年間のコースが更に二つのコースに分かれスペシャルコースと呼ばれるそこではシンガポールの将来のエリートが育てられて行きます。どのコースに進むかは全て小学校卒業試験の点数で振り分けられます。
中学卒業後の教育をかいつまんで言いますと、卒業時に行われるイギリスのケンブリッジ中等教育終了試験の点数で、大学進学を目指す生徒のためのジュニアカレッジ(2年間)、専門技術を身に付けるためのポリテクニック(3年間)、技術教育研修所(2年間)などに進路が決まります。ポリテクニックから大学へ、技術教育研修所からポリテクニックへの道も成績次第では望めないこともないのは唯一の敗者復活の道のようです。
 小学校4年生から始まる振分けの最終戦は大学進学です。小学校から振り分けられた子供達の約12%がシンガポールに2つある国立大学に進学を許されます。政府は将来的には大学進学率を30%まで延ばしたいとし、今年3つ目の大学が開校されました。
 大学進学を果たしたトップ12%の中のほんの一握りの数人が、毎年超エリートとして政府のおめがねに適い海外の一流大学に送られやがてシンガポールの頭脳として活躍するためにシンガポールに戻ってきます。
 この一握りの超エリートは天才に等しいわけで、それを選び出すための振り分け制度に踊らされているのが私達親の方のようです。我が子が凡人と気付けば、天才を見つけるための振り分けテストに乗せられ踊らされることもないでしょうし、点数に恐れる子供達も減るのではないかと思います。が、凡人だからと放っておくのも危ないようです。我が家の次男と三男は後者の例でシンガポールの大学に入れずお隣の国、マレーシアまで越境入学するはめになりました。何処の国も子育てには苦労がつきもののようです。