17 2002.10.1

朝顔とお月見

 That's(雑)Shibata先月号の「ふるさとへの絵たより」を読んで、そうだったのか、DNAのせいだったのかと膝を打ちました。

 シンガポールで日本のアサガオを咲かせたくて、この5月に日本からアサガオの種をたくさん買って来ました。小さなベランダをアサガオでいっぱいにしたくて、15個の植木鉢を並べました。すぐに芽は出たものの、それからちっとも成長しないのです。7月になっても8月になっても背丈も伸びず、やっと伸びてきたツルも糸のように細く、とてもつぼみをつけるような様子でもありません。肥料を与えたり、話しかけたり、あれやこれや試みてみたのですが、8月のうちに花も咲かせないまま半分以上の鉢が枯れてしまいました。
お月見の頃に咲いた日本向きDNAを
持ったアサガオ。大きく見えますが
大きい方で直径4cmです。
シンガポールのモーニング・グロー
リー(アサガオ)。一年中咲いてい
ます。

 9月号の「ふるさとへの絵たより」の船岡から松戸に持ちかえった朝顔のお話でナゾが解けたのです。私が日本から持ちかえったアサガオの種は日本の気候向きDNAを持っていたのです。9月になってやっと1−2輪花を咲かせました。雨が多くなり乾季特有の猛暑がゆるんだからかもしれないと納得したのでした。10月近くになってもまだ、けな気に一輪ずつ小さな花を咲かせています。何代か育てれば、シンガポール向きのDNAを持ったアサガオに変り、「ふるさとへの絵たより」のアサガオの絵のように何輪もの花を楽しめるかもしれないと、期待は大きく膨らむのです。

ビルや木立に阻まれたシンガポールの小さな空に
輝く仲秋の名月。
さてアサガオに心を奪われている間に、暦だけは熱帯国でも秋になりました。9月21日は仲秋の名月でした。今年は晴れていたのですが、あいにくインドネシアからの山林火災の煙のせいで霞がかかったような、モヤがかかったような空で、くっきりとあざやかな名月を楽しむことはできませんでした。それでも、その輝きと明るさは格別でした。シンガポールで見る月はたいそう美しく、日本の月もこんなに美しかっただろうかと、ゆらりゆらりと東の空から昇ってくる大きな月を見るたびに思います。
 
 シンガポールでは中国系の人達が仲秋の名月を祝います。日本のお月見は、もともと中国から伝わった風習と言いますが、シンガポールで祝われる名月は、ランタンフェスティバル(ちょうちん祭り)と呼ばれ、月そのものを愛でるよりも、ちょうちんに灯りを灯して子供達が行進したり、川や池にちょうちんを浮かべて(もともとは死者の霊をなぐさめるためだったそうです)、月餅とよばれるお菓子を食べてその週を賑やかに過ごすことを楽しんでいるようです。
ちょうちんを水に浮かべてお月見を
祝う。チャイニーズガーデンにて。
ちょうちん船。チャイニーズガーデン
にて
中国系の人達がお月見の頃、必ず口にする月餅。

 ランタンフェスティバルが終わると、人材輩出を国の方針としているシンガポールは小学校から大学まで学期末、卒業試験シーズンになり、国中が受験生に合わせるがごとくしばらくの間静かになります。ランタンフェスティバルはプレッシャーの多いシンガポールの子供達にはしばしの息抜きの時でした。