14

ワールドカップ模様 イン シンガポール

 「このことから我々は、古いプレーヤーの実力と経験にいつまでも頼ることをせず、海外の優秀な選手を受け入れ、経験と実力と新しいエネルギーを混合させ、前進しなければならないことを学んだ。」ワールドカップ初日の試合で、前回の優勝国フランスが退敗した際のシンガポール首相のコメントです。天然資源のないシンガポールでは優秀な人材育成が国策の一つですが、育てられた優れた人材は海外に流れ出て行くジレンマをもっています。その解決策として海外から優秀な人材をあらゆる分野に受け入れようとの政府の方針に掛けたコメントでした。

 ワールドカップ開始前から、誰もが知っているあのバーガーショップで、Kバーガー、Jバーガー発売の宣伝が賑々しく始まりワールドカップ気分を誘い出し、各地域のコミュニティーセンターでは、大型フラット画面とサウンドシステム、クーラーの効いた涼しいセンターで中継観戦をと、バーナー広告がはりめぐらされ、自国チームが参戦しているわけでもないこの国で、誰も彼も、職場でも、テレビでもラジオでも新聞でも、話題はワールドカップ一色のワールド杯フィーバー イン シンガポールの6月でした。

 シンガポールはスポーツと言えばサッカー、時間があればサッカー、イギリス・プレミアリーグは寝なくても見る、そのような国柄ですから、隣国マレーシアと同様、サッカー熱は日本以上ではないかと思うほど大変なものです。この小さな国に12チームから成るプロのシンガポール リーグ(S−League)があること、首相自らサッカーを引き合いに出して政府のコメントを流すことからもサッカー熱の高さを推し量ることが出来ます。
 あまり外で遊ぶことのないシンガポールの子供達ですが、W杯以来場所を見つけてはサッカーに興じる子供達を見かけることが多くなりました。

 今回のワールドカップが始まって間もなくの頃、シンガポールのショッピングセンターやデパート、商店、屋台で有名なホッカーセンターなどで、お客激減のため売り上げ20%落ち、と大騒ぎになりました。日本と1時間の時差があるシンガポールでは午後7時半と言うプライムタイムに夜の試合開始です。屋台で夕食を済ませ、涼しいショッピングセンターなどに入り込み、夜のひとときを過ごすのがシンガポーリアンの一般的ライフスタイルです。お客を家庭のテレビに取られてしまったショッピングセンターは、大急ぎで大型スクリーンを取り付け、ホッカーセンターでもテレビを設置して客の呼び戻しに躍起になりました。

 試合の最中には、テレビ中継を見ながらの声援や「ゴール!」という喚声が近所中から聞こえてきます。シンガポーリアンはどこの国を応援しているのでしょう。やはりシンガポール統治時代、政治、教育、そしてスポーツに多くの影響を残したイギリスを応援する人が多いようです。

 日本、韓国の活躍はシンガポールでも賞賛高く、シンガポールの首相をしてシンガポールチームも2010年ワールド杯出場を目標にしようと言わしめたほどです。

 Miyagiスタジアムの名前もすっかりポピュラーになりました。ある日のMiyagiスタジアムの空はどこまでも青く美しく、私は試合を楽しむよりも、あの青空の下につながっている柴田町に思いを馳せたことでした。

 4年前のワールド杯ではまだまだ子供だった息子達が、日本チームのジャージを欲しがり、日本から取り寄せたりしたことを思い出します。あれから4年、息子達は少し成長したのか、今年は誰も欲しがる様子はありません。次のワールド杯は2006年、上の息子3人は社会人になっているはずです。正直に言えば、サッカーにはほとんど興味のない私は、別の思いをもって、早く来い来い2006年ワールド杯、の心境なのです。