NO-47

 
毒虫がうようよと這うおもいせリ

 このところ、牛、豚、鶏などの食品の産地偽装が相ついで暴露されている。驚くばかりだ。さらに宮城県産の“生ガキ”に韓国産を混入して販売している疑惑が浮上してきた。これには驚くよりも無念を感じた。というのは、私は“生ガキ”が大好物なのである。これまで安心して賞味してきたが躊躇せざるをえなくなった。
 じつは2月末にも郵便局の“ふるさと小包・新鮮便”で“松島生ガキ”を取りよせて心ゆくまで賞味したばかりだった。保冷の“チルドゆうパック”便で届いたのは350g詰の生ガキが2パック。発売元は宮城県漁業協同組合でパンフレットには「小粒ながら身がよく締まり、味わい深い生ガキのむき身です。むきたての磯の恵みをお召し上がり下さい」とあった。カキ酢も3袋付いてきたので、よく洗い、これを付けて食べればよいのだった。
 まず、1パックの350gは3夜に分けて私が賞味した。1回分が約120gだから小鉢に盛り付けると、山もりになるほどの量だ。もう1パックはフライにして妻と次男が食べた。私も手を伸ばしたが、これも美味である。
 仙台湾の栄養豊かな海潮に育まれたカキは、プリプリした健康優良の実で、かみしめると、プチンと口中で弾ける。磯の香が口中にあふれて至福の味覚をおぼえる。まさか、あの“ふるさと小包・新鮮便”に韓国産の生ガキが混入していたとは思わないが、後味が悪い。
 わが国が1年間に輸入する韓国産の生ガキの量は14,000トンにのぼるという。その約3,000トンが宮城県内に入ってくるらしい。そのうちほとんどが韓国産の表示で店に出回ることは無いという。とすると……、だ。
 3月下旬、石巻地方の3つの漁業協同組合が宮城県知事に対して「韓国産ガキの混入疑惑を徹底的に解明してほしい。」と申入れた。報道によれば、仲買業者に以前勤めていた男性は「浜が休漁する年末年始に“宮城県産”の生食用カキが店頭に並ぶのが、そもそもおかしいでしょう」と語る。また「123トンもの韓国産が運びこまれ、丸ごと“宮城産”にした。混入という生易しいことではなく、すり替えが実態だ」と語ったとも……。
 このような残念な報道が連日続いている。
 隣の宮城県角田市の畜産農家が牛肉の直売所をオープンした。肉類の偽装事件が相ついでいるので、中間業者を介さずに売ることで、消費者の信頼を取りもどしたい…と、開店にふみきった。連日、客でにぎわっているらしい。
 “生ガキ”は、鮮度と衛生的に処理されているかどうか?が消費者の関心事である。安心で安全な食料品を消費者に供給するのが生産者と仲買業者をはじめ流通関係者の責務だ。
 当分は、生ガキを口にすまいとおもっている。
 早く、磯の香の疑縮した美味を堪能できるよう、業界の自浄と刷新の努力を期待している。不正が判明すれば厳正な処罰を行うべきであろう。

加速する春の気配に工事場のクレーン数基腕まくりしつ

センサーがゆきずりの吾(あ)に門灯をともせば白木蓮なましろくあり


 仙台市の地下鉄の始発駅である富沢駅は高架駅とでも言いたいほど地上高くホームがある。エスカレーターを2回乗りついでホームへ上るほどだ。当然周囲の見はらしは良い。いま駅の西側一帯は、マンションやビルの建設ラッシュで活気がある。これらの最上階にはクレーンが設置され資材を釣り上げたり運搬している。春の日差しの中、これらのクレーンが腕まくりしながら仕事に精を出しているように見えた。
 用件を済ませると夜になった。路地を駅に向かっていると、門にセンサーが設置されている家があった。私に感知して門灯がともる。と、白木蓮(はくれん)の花がほんのり、宙にういているように見えた。
 おぼろ夜で、幻想的で少し病的な感じの花は魅力的だった。


 三十一音の韻律の文学の魅力にはまって三年になる。平成11年上期の河北歌壇賞(河北新報社・佐藤通雅選)を受賞した。
 短歌を勉強すればするほど、類形的でまとまりすぎて新鮮味がなくなった。表現が古めかしくて色褪せてきた…などと言われるようになった。むずかしいものである。「歌は人である」と言われるが、色褪せた自分にどんな春の彩りをそえて旬の短歌を作ろうか…と考えている。
柴田町船岡在住・渡辺 信昭