たびたび早朝の仙台市の富沢公園を通りぬける。丁度、飼犬の散歩の時間で、いろいろな犬種をつれた人達とすれ違う。シーズー犬に柴犬などの小型犬が主だが、なかにはダルメシアンやシェパード、セントバーナードなどの大型犬をつれた人もいて、朝の公園はにぎやかである。
私の家の周囲にも飼犬が沢山いる。いつも妻と話題にするのは2軒東隣のM氏宅に飼われている雌犬のプリ(プリティ・pretty)である。その名のように可愛らしい犬で、茶褐色だ。頭は頂上が平たく耳と耳の間がやや幅広い。耳が垂れている。鼻の線は口の周囲になるとキュッと細くなる。鼻すじのとおった美犬だ。体高は45cm位。体長が60cmで体重は15sはありそうだ。 この犬、実はかなりの有名犬である。というのは、暖かな日は、自宅のコンクリートの塀(高さが約1.6mで幅17〜18cmぐらい。)に飛び上がり、立ったり腹這ったりして塀沿いの町道(南北に通じている。)を通行する自動車や通行人を見下ろしているからだ。この町道は小中学校の通学路にもなっており、子供達とも仲良しである。女子中学生は頭を撫でてやるし、小学生は姿が見えないと「プリ!ジャンプ!!」と声をかける。すると、彼女はヒラリと塀の上に飛び上がってくる。小学生の男子児童にイタズラッ子がいて「ワンワン」と大声で騒ぐ。と、彼女が猛然と応酬する。 私の妻もプリと仲良しだ。妻が買物のために塀のそばを通ると姿を見せる。妻の自転車の音やにおいで判断するのだろう。彼女たちの仲良しには訳がある。妻がたまにだが餌を与えているのだ。1週間から10日ぐらいの割合でウィンナ・ソーセージなどを食べさせてやる。プリにはそれが楽しみなのだ。ただ、妻が通るたびにジャンプしても毎回餌がもらえるわけではない。そこで彼女はアピールの方法を考えた。ここ1年半ぐらいの彼女の態度の変化は @妻が買物に行くと、帰ってくるまで塀の上で待つようになった。 スーパーの北海屋へ行くときは北の方へ左折する。するとプリは北を向いたままで待っている。イトーチェーンへ行くときは、南の方向へ右折する。プリは南を向いたままで待っているのである。これが1年間ほど続いた。 Aそれでも必ず餌をもらえるわけではないのだ。そこで彼女は妻が帰ってくると、口を大きく開け、口の周囲を舌でなめまわすようになった。これには妻が驚いた。プリは餌を与えられる機会が多くなった。が、これも毎回というわけにはいかない。 Bすると、餌をもらって4〜5日間は、妻が通ってもジャンプしなくなったのである。餌をもらえない日数を判断し、その間の無駄なジャンプを止めてしまった。 現在は、この態度でいる。なんとも打算的なプリだ。だが、ここまで思考する能力が犬にあることに感嘆している。 西鳥島でイリオモテヤマネコを発見した動物文学の第一人者の戸川幸夫氏の小説には日本犬が数多く登場する。氏の小説「いぬ馬鹿」の解説に日本犬の系譜(監修・麻布大学獣医学部・田名雄一教授)がある。 これには「犬は約2〜3万年前にオオカミを家畜化したことで生まれ、猟犬、番犬、牧蓄犬、として人の暮らしを助け、必要に応じて品種改良されてきた。日本犬は約1万年前に縄文人が持ち込んだ南アジア系の犬をもとに、弥生時代と古墳時代に朝鮮半島から渡米した人々が連れてきた犬との混血で現在の多くの種の基礎ができた。」とある。 私の家の西隣りには、この日本犬の3歳ぐらいの雌の柴犬がいる。血統書付きの優秀犬らしいが、家の中で飼育されているのは感心しない。老主人が朝夕散歩につれてゆく。キク(菊姫)という名前で、たしかにお姫さまのように育てられている。キクは来客の自動車の排気音をよく記憶している。1週間に1度、ヤクルト配達のお姉さんが軽のワゴン車でやってくる。この車が私の家の前までくると、彼女は玄関へ飛び出てきて甘えた声で啼きはじめる。老主人にキクの自慢話を始められたら大変だ。20〜30分は耳を傾けなければならない。犬の話題になったら早々に退散することにしている。 富沢公園に話をもどそう。 気になるのは飼犬のフンの処理である。散歩させている人のほとんどが公園の樹木の陰に排便させている。終ると犬は俊足で土をかぶせて(2〜3度土を蹴り上げる程度。)去ってゆく。飼犬は、みんなビニール袋や移植ベラを持参しているからだが、フンを持って帰る人を見たことが無い。日中は幼児のお母さんたちがたくさん公園に遊びにやってくる。まことに不衛生である。愛犬のフンの処理は、飼犬が最低限守らなければならないマナーであろう。
子供のころ凧は自分で作った。障子紙を切り、竹ヒゴを作ってスルメ凧にした。寺山や白石川の土手で友人と飛ばし、高さを競ったものである。凧に取り付ける糸の角度と“シッポ”の長さの調節が重要で、バランスが悪いとクルクル回転して落下してしまう。何度も調節が重要で、バランスが悪いとクルクル回転して落下してしまう。何度も調節しているうちにコツを覚えたものだった。
今、子供たちはカイト(洋凧)を買ってきて飛ばしている。ビニール製のカイトはよくあがる。丈夫にもできている。雲もない青空の下の蔵王連峰。その空にカイトはよく似合う。 |